1.29.2009

まとめ その1

新しい企業モデル「アート・カンパニー」

80年代から90年代のいわゆる「品質経営」が限界を迎え、世界は「想像経営」に転換している。
それはモノづくりの否定ではない。逆に、単に「モノからコトへ」というのは誤りである。SAPやsalesforce.comのように、モノを保ちつつ「コト化」するかがカギである。必要なのはコトの上にモノを創り込むこと、モノの「コト化」であり、「モノからコトへ」ではない。

アート・カンパニーとは「知識デザイン」する企業である。知識デザインとは、知識創造×デザイン、つまり<仮説推論思考>と<人工物のデザイン>の融合–––現場やモノに接しながらのモノ=コト同時の創造プロセスである。モノの質だけにとどまらない、人間的な、経験やプロセスの質(無名の質)をも同時にデザインすることである。


第1章
アート・カンパニーの登場とその背景、創造経営のサイクルの台頭
第2章
「プロダクト」そのものの概念の変化
第3章
創造経済時代の企業の条件、「真摯さ」
第4章
方法論としての知識デザイン
第5章
その方法論の実践のために
第6章
総括



第1章
創造経済とアート・カンパニーの台頭

〜創造経済の3つの側面〜
「分析パラダイム」から「創造パラダイム」への不連続な変化
<1>アイデアや知識が経済的価値の源泉となり、新たな産業セクターとして台頭していく(アイデア・エコノミー)
<2>創造的産業や既存の産業において、アイデアを提供する新たな世代が台頭し、そうした世代が活躍する新たな社会が到来する(アート・エコノミー)
<3>そうした時代の企業や組織の変化(イノベーション・エコノミーあるいは知識ベース経営・組織への変化)


イノベーションは組織の日常の問題である。常に変化し続ける経済の中で、イノベーションの体質を企業文化のレベルにまで根付かせることに世界の巨大企業が全精力を費やしている。


〜創造経営の先頭集団に共通する「デザイン」とは〜
創造経営企業やリーダーにとっての「デザイン」とは、見た目のデザイン(色や形)のことではない。単にモノを形態化する作業でもない。また、単なる抽象的思考法(エピスメーテー)や手法(スキル)だけでもないことも明らかである。


〜創造経済の世紀の新しい企業モデル〜
1.器量としてのアートを有する(知識デザイン・デザインを有効に用いる)
2.真善美を求め、美において実現する(真摯さと美、倫理企業からアート・カンパニー)
3.組織として豊かな知を有する。(知的集積の質の高い、ダイナミックな知識資産を有する:自在なつながり、即興力、指揮者がいなくてもエコシステムとして価値を生み出す。
このようなアート・カンパニーにおいて行使される創造的な方法論を「知識デザイン(knowledge design)と呼ぶこととする。
この3つの特性は、
<1>先行的構想力(先見力)
<2>プロダクトに多様な要素(コンポーネント、ソフト、サービス、システム、ブランド)
<3>創造言語(例としてのパタン・ランゲージ、経験と内容の綜合)(革新力)